こんにちは。bob.channelです。
房室ブロック(AVブロック)は
Ⅰ度房室ブロック、Ⅱ度、Ⅲ度など
種類が色々あってよく分からないという人は必見です。
Ⅰ度房室ブロック、Ⅱ度房室ブロックと
細かく考える前にそもそも房室ブロックってなに?
ということから考えましょう。
房室ブロックとは?をイメージできると
Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度も以外に簡単にイメージできるようになります。
ちなみに
房室ブロック=AVブロック=AVblock(AVB)
などと呼ばれます。
さっそく房室ブロックについて考えていきましょう。
【不整脈別解説】
1.房室ブロック(AV-block)
✴︎注意!画像は房室ブロックではありません。イメージ画像です。
⑴房室ブロックとは
まず「房室ブロック」を噛み砕いて考えます。
房室ブロック=(心)房(心)室ブロック
という呼び名に変えてみるとどうですか?
なんとなくイメージできませんか。
心房と心室がブロックされているということは
心房の刺激が心室へ伝導されないということです。
少し詳しく考えると心房と心室は
房室結節で繋がれてますので
房室結節周辺の伝導障害であると理解しましょう。
房室結節の働きは
こちらを参照。
房室結節周辺の伝導障害を心電図で考えます。
復習ですが房室伝導はPQ時間です。
そこが遅延しているのか、
刺激が房室結節以下に伝わらないのかで
心電図の波形が変わります。
結局は心房の刺激が心室にうまく伝わらないとイメージしてあとは
- 刺激が遅延するのか(Ⅰ度AVB)
- そもそも刺激が伝わらないのか(Ⅱ度AVB、Ⅲ度AVB)
を見分ける必要があります。
⑵房室ブロックの分類
大きく分けて下記の通りです。
- Ⅰ度房室ブロック
- Ⅱ度房室ブロック
(ウェンケバッハ型、モビッツ型) - Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)
①Ⅰ度房室ブロック
Ⅰ度房室ブロックは、1番危険性の低い房室ブロックです。
Ⅰ度房室ブロックは刺激が遅延します。
〈特徴〉
- PQ間隔延長:0.21秒以上(大マス1個以上)
- QRS波の脱落はない
- 徐脈傾向になる
- 血圧低下はなく様子観察になる
心房から心室への刺激が遅延しているため
P波とQRS波の間隔が長く(PQ間隔延長)なります。
また、刺激が遅延しているだけで
〝心房から心室への刺激は伝わる〟ため
- QRS波は脱落しない
⇨刺激は伝わるから - 血圧低下もない
⇨心室の血液充満時間もあり拍出もできるから
結果、様子観察になります。
②Ⅱ度房室ブロック ウェンケバッハ型
呼び方が多いのでまずは名称から復習しましょう。
Ⅱ度房室ブロックウェンケバッハ型(Wenckebach型)
=モビッツⅠ型
心房から心室への刺激が時々伝わらないイメージ!
⇨伝わる時はP波の後にQRSが続く
⇨伝わらない時はP波の後にQRSが続かない
①ウェンケバッハ型と
②モビッツ型の違いは
①PQ間隔延長後にQRS波が脱落するのか
②PQ間隔は一定でQRS波が脱落するのかの違い
<特徴>
- PQ間隔が徐々に延長し、QRS波が脱落
- この周期を繰り返す(ウェンケバッハ周期)
『ウェンケバッハ型』は
PQ間隔が徐々に延長しQRS波が脱落します。
QRS波が脱落するということは、、、
心房の興奮が心室に伝わっていないということです。
その時は心室が収縮しないため全身に血液が拍出されません。
→QRS波脱落した時のみ血圧は発生しない
『ウェンケバッハ型』は
QRS波が持続して脱落するわけではなく、
QRS波が脱落する一拍だけ血圧が低下し、
QRS波を認める時は血圧は維持されるため
基本的に様子観察になります。
また、ウェンケバッハ型の発生部位はほとんどが
房室結節の伝導障害であり迷走神経の亢進が原因で
無症状のことも多く失神等のリスクもないため
様子観察となることが多くなります。
③Ⅱ度房室ブロック モビッツ型
こちらも呼び名から復習です。
Ⅱ度房室ブロックモビッツ型=モビッツⅡ型
イメージはウェンケバッハの項目に記載してます。
<特徴>
- PQ間隔一定
- QRS波が突然脱落
QRS波の脱落の頻度(伝導比)が
3:1以下(P波3つに対してQRS波1つ)の伝導比の場合
高度房室ブロック(advanced AVB)と呼びます。
循環器内科では アドバンス と呼ばれることもあります。
モビッツ型もウェンケバッハ型と同様に
QRS波が脱落するということは、、、
心房の興奮が心室に伝わらないため心室は収縮しません。
すなわち、QRS波が脱落した時は血圧は発生しません。
QRS波が連続して脱落すればするほど危険で
『高度房室ブロック』はペースメーカーの絶対的適応です。
ペースメーカー適応の基準、考え方
心室拍数<40/分、心室停止>3秒(QRSが3秒以上出ない)を
目安にします。
更に失神、痙攣、眼前暗黒感、めまい、息切れ、易疲労感、
心不全などの自覚症状がある場合も適応になります。
房室ブロックの発生部位に関わらず上記の基準で適応が決まります。
モビッツ型はヒス束以下での伝導異常であり
Ⅲ度房室ブロックに移行しやすいという特徴があります。
ヒス束は心房と心室の間にあり
心房の刺激が心室に入る時にヒス束を通るため
ヒス束に異常があると心室への刺激が途絶えQRS波が脱落します。
ということは、、、
モビッツ型の場合は
いつでもⅢ度房室ブロックに移行してもおかしくないため
ペースメーカーの適応を考慮されます。
眩暈や失神などの症状があれば
『高度房室ブロック』でなくてもペースメーカーの適応になります。
✳︎ヒス束 などの刺激伝導系それぞれの働きは刺激伝導系の投稿
こちらをご覧ください。
④Ⅲ度房室ブロック 完全房室ブロック(complete AV block=CAVB)
こちらも呼び名から復習です。
Ⅲ度房室ブロック=完全房室ブロック
=complete AV block=CAVB
『完全‘房’‘室’ブロック』(Ⅲ度)を
噛み砕いて考えてみましょう。
名称の通り、
完全に心‘房’と心‘室’がブロックされている状態です。
完全 心房 心室 ブロック と覚えると
イメージしやすいですよ。
このブログを読んでくれている方は
完全房室ブロック=完全心房心室ブロック と覚えましょう。
これでイメージがしやすくなります。
<特徴>
- P-P間隔、R-R間隔一定
- P波とQRS波は無関係
- 徐脈
ここから更に噛み砕いて考えていきましょう。
完全心房心室ブロックということは
心房からの刺激が心室に伝わらない状態です。
- 心房はちゃんと動いている
⇨P波は正常、P-P間隔一定 - 心室への刺激がブロックされている
⇨QRS波が出ない - そのままQRS波がでなければ死に至る
⇨心室の自動能が発揮される(=補充調律)
補充調律はこちらを参考に!
心室は 心房からの刺激がなくても
心室だけで頑張ろうとします。
これが心室の自動能と考えましょう。
心房からの刺激で動いているわけではなく、
心室が単独で頑張っているため徐脈になります。
心拍数が45回/分以下になると
“アダムスストークス発作”を起こしやすくなります。
“アダムスストークス発作”とは、、
不整脈が原因で心臓から脳への血流が急激に低下して眩暈や失神発作を起こすこと
⇨とりあえず眩暈等の症状があればすぐにしゃがんでもらいましょう
『完全房室ブロック』は基本的に
ペースメーカーの適応となります。
心房と心室がバラバラに動いているので
ペースメーカーで心房と心室のリズムを整えることで解決します。
・心房細動を伴う完全房室ブロック
『AF(心房細動)』と『完全房室ブロック』が
同時に出現すると特徴的な波形になります。
心房細動はこちらを参照 心房細動(AF)の波形について
〈心房細動+完全房室ブロックの特徴〉
- f波の出現
- R-R間隔一定
- 徐脈傾向
本来『AF』は‘R-R間隔不規則’ですよね。
しかし、『完全房室ブロック』を合併すると
心房と心室が完全に別々に動いている(CAVB)ので
心房が細動を起こしていても(AF)
その刺激はブロックされており
心室までいかないということになります。
心室は“補充調律”となるためR-R間隔は一定になります。
AFとCAVBとAF+CAVBを比較して波形をご覧ください。
『房室ブロック』についてはかなり長かったので簡単にまとめてみます。
【まとめ】
房室ブロックとは、、、
- Ⅰ度房室ブロックは心房から心室への刺激が
ちょっとだけブロックされた状態(PQ間隔延長)で特に問題ない - Ⅱ度房室ブロックは心房からの心室への刺激が
ときどきいかない(ときどきQRS波が脱落する)
→ウェンケバッハは様子観察
→モビッツ、特に高度房室ブロックはペースメーカー適応 - Ⅲ度房室ブロックは心房からの心室への刺激が
完全にいかないからそれぞれが独立して動く
→心房と心室が自分勝手に動くイメージ
→P-P間隔一定、R-R間隔一定、P波とQRS波無関係
➡︎自分勝手に動く心房と心室をリズムよく
正常にするためにペースメーカーが適応となる
以上、bob.channelでした〜
読んでいただきありがとうございます。