こんにちは。bob.channelです。
今日はペースメーカー不全について解説していきます。
合わせてこちらの記事も参考に!
ペースメーカーの役割と適応
ペースメーカーのモードを一文字ずつの意味
ペースメーカーのモードについて
【不整脈別解説、ペースメーカー】
1.ペースメーカー不全
ペースメーカー不全のペーシング不全、センシング不全(アンダーセンス、オーバーセンス)それぞれについて説明します。
では、順番に説明を始めます。
2.ペーシング不全(pacing failure=ペーシングフェーラー)
ペーシング不全とは
ペーシングスパイクがでない、またはペーシングスパイクで刺激しても心筋に伝わらない、または心筋が反応しない状態です。
これを心電図上で考えると
- スパイクがない
- スパイクに続くP波、 QRS波がでない
上記の状態で、いずれも必要なHR設定よりもHRが少なくなります(脈が途切れる)。そのため、眩暈や失神を起こすリスクがあります。
⑴ペーシング不全の症状
眩暈、眼前暗黒感、失神(syncope)、息切れなど
→スパイクが出ない、またはスパイクが出てもそれに続かないということはペーシング不全の間は脈が途切れている(洞停止のような状態)ため脈が途切れたらどういう症状が出るのかをイメージしましょう。
ちなみに失神は英語でsyncopeなので病棟では シンコピー と呼ばれていることも多いと思います。
⑵ペーシング不全の原因とペーシング不全時の対応
前提として、ペーシング不全を疑う場合は12誘導心電図をとり鑑別します。その後ペースメーカーチェックとレントゲンでのリードの位置確認も行います。
〈原因→対策〉
- ペーシング閾値の上昇→ペーシング出力レベルを上げる(アウトプットを上げる)
- リードの断線、位置のズレ→リードの入れ替え、位置確認
- バッテリーの消耗→ジェネレーター交換
ペースメーカーチェックとレントゲンでの位置確認が重要!
〈ペーシング閾値上昇の原因〉
電極付近(リードの先端に電極がある)の心筋梗塞や瘢痕形成、リードのずれ、代謝(酸塩基平衡)、電解質異常、薬剤による影響などがあります。閾値上昇しているとペーシング出力を上げて対応しますが、根本的に改善させるには閾値上昇の原因を取り除く必要があります。
〈ペーシング出力を上げるということのイメージは、、、〉
もっと強い刺激でペーシングして心臓を動かそうとする状態です(心筋の反応が鈍くなっているならこれで解決)。
しかし、リードの位置異常や断線の場合はリードを再度固定し直す、または入れ替える必要があるためレントゲンとペースメーカーチェックが必要ということになります。
〈temporary PM(一時的ペースメーカー)の場合は〉
破損や接続外れ、電池切れを疑いすぐにチェックする必要があります。
3.センシング不全(sensing failure=センシングフェーラー)
センス(感知)に問題がある状態です。センシング不全はアンダーセンシングとオーバーセンシングに分かれます。
センシング不全を学習すると感度と閾値に振り回されてなかなか理解できない状態に陥ります(僕は理解できませんでした、、、)。まずセンシング感度、閾値についてサラッと説明します。
⑴センシング感度・センシング閾値
感度、閾値の話がややこしいと思いますのでセンシング感度と閾値について解説します。
⑵アンダーセンシング
自己のP波やQRS波が出たのに感知できず(自己脈を無視)不要なスパイクがでている状態です。すなわちペースメーカーの感知機能が低い状態です。
ペーシング不全と同じで異常があれば、とりあえず、12誘導心電図とレントゲンとペースメーカーチェック!!
①アンダーセンシングの症状
脈の乱れを自覚することもありますが、無症状のこともあります。
スパイク on T(PVCのR on Tと同じイメージです)によりVT・VFが誘発されることがあり、その場合はVT・VFの症状と同様です。意識消失も起こり得ます。
アンダーセンシングで要注意なことはスパイク on Tによる致死的不整脈の誘発です!
②アンダーセンシングの原因とアンダーセンシング時の対応
アンダーセンシングは自己脈が見えてないから自己脈を無視して不要なスパイクがでる状態です。ということは感度を鋭くして自己脈を見えるように設定します→設定値を下げます
〈原因→対策〉
- センシング感度の低下(鈍い)、センシング閾値(設定値)が高すぎる→感度を上げる(鋭くする)=センシング閾値を下げる
- リードの断線、位置のズレ→リードの入れ替え、位置確認
ペースメーカーチェックとレントゲンでの位置確認が重要!
また、アンダーセンシングのポイントは出なくていいところに不要なスパイクが出るためバッテリーの消耗が早く、ジェネレーター交換の時期が早まります。
〈temporary PM(一時的ペースメーカー)の場合は〉
破損や接続外れ、電池切れを疑いすぐにチェックする必要があります。
⑶オーバーセンシング
自己のP波、QRS波以外のT波やノイズなどを自己のP波、QRS波と感知しスパイクがでない状態です。すなわちペースメーカーの感知機能が過剰な状態と言えます。
ペーシング不全と同じで異常があれば、とりあえず、12誘導心電図とレントゲンとペースメーカーチェック!!
①オーバーセンシングの症状
眩暈、失神等のアダムスストークス発作を起こす可能性があります。
→自己脈以外のなにかを過剰に感知しスパイクがでないため脈が一過性に途切れることでアダムスストークス発作を起こす可能性があります。
②オーバーセンシングの原因とオーバーセンシング時の対応
オーバーセンシングは自己脈以外のノイズ等を自己脈と勘違いし、スパイクが出ない状態です。これは感度が鋭すぎるため自己のP波やQRS波より低いT波やノイズまで自己脈と感知してしまう状態と言えます。すなわち、感度を鈍くして自己脈以外を見えないように設定します→設定値を上げます
〈原因→対策〉
- センシング感度が上昇(鋭い)、センシング閾値(設定値)が低すぎる→感度を下げる(鋭くする)=センシング閾値を上げる
- リードの被膜損傷、体動等によるリードの移動→リードの入れ替え、位置確認、ペースメーカーチェック
- 筋電位、電磁干渉(EMI)→ノイズの除去、周囲の電磁干渉を除去
ペースメーカーチェックとレントゲンでの位置確認が重要!
〈アンダーセンシングとオーバーセンシングの覚え方〉
あくまでも個人的な覚え方です、、、
アンダーセンシングは
- アンダー(不足、不十分)にセンス(感知)する→感知が不十分、弱い
➡︎自己脈を感知できないから不要なスパイクがでる
オーバーセンシングは
- オーバー(過剰)にセンス(感知)する→感知が過剰
➡︎T波やノイズなども自己脈と感知してスパイクが出ない
4.まとめ
- ペーシング不全はペーシングスパイクがでない、またはペーシングスパイクで刺激しても心筋に伝わらない、または心筋が反応しない状態
➡︎ペーシング閾値の上昇が原因ならペーシング出力レベルを上げる(アウトプットを上げる) - センシング不全はアンダーセンシングとオーバーセンシングに分かれる
- アンダーセンシングは自己のP波やQRS波が出たのに感知できず(自己脈を無視)不要なスパイクがでている状態、すなわちペースメーカーの感知機能が低い状態
➡︎センシング感度の低下(鈍い)、センシング閾値(設定値)が高すぎることが原因なら感度を上げる(鋭くする)=センシング閾値を下げる - オーバーセンシングは自己のP波、QRS波以外のT波やノイズなどを自己のP波、QRS波と感知しスパイクがでない状態、すなわちペースメーカーの感知機能が過剰な状態
➡︎センシング感度が上昇(鋭い)、センシング閾値(設定値)が低すぎることが原因なら感度を下げる(鋭くする)=センシング閾値を上げる
以上、bob.channelでした〜
読んでいただきありがとうございます。